Right to Light

陽ととなり

彼の月、垂る糸

「だが俺には何がある?」

この問答をひたすらに繰り返す生を相変わらず過ごしている。自分にあるもの、楽しむ心、好奇心、友達、家族、言葉、作ること(最近は危ういが…)…。こうして並べてみてもどれも今は自信を持ってそう言える。ただ厄介なのが“だが”の部分で、私の緩んだ心は足るを知ることなく人と自分を比べ続ける。目の前でひけらかされた因縁に私はまだ執着し依存して導きの果てにある現実を割り切れない思いで眺めているのだ。微睡みと二日酔いの布団の中で、すぐ隣にある現実を夢見た時は本当に自分が気持ち悪くなった。私にあるもの、醜いまでの嫉妬。

 

言葉にしなくてはいけないなと思った。因果は巡る。初めて会った人とそんな話をしながら別れ、今朝の私から一転、日を過ごす私に言葉が生まれてよかった。拙いながらも真剣に拾ってくれた出会いに感謝して今日も私は夜に縋る。

 

椅子の話をしただろうか。思いの中にあるその椅子をいつも私は丁寧に磨いている。埃が被らないように、いつでも座れるように、迎えられるように。そんな体裁の良い言葉を繕いと自覚しながらその真意は自分でも解っていた。越えられない一線、手を伸ばせば触れられる距離にいてもなお私が理性で自分を縛るのは、ただただ崩したくない関係があるからだ。想いも因縁も憧れも全部解っているから私は自己嫌悪に沈んでいく。全部自分のため。一時得られる自己満足。そこに正しさは無い。

 

光栄に思う。伝えたい言葉がたくさんある。情緒が溢れるこの感覚。考える時間はまだあるけれど、そこには想いの火が点っていなければ気が済まない。思考したものじゃ認めたくない。もっと内から湧き出るような、澄んでいなくとも、これが私にあるものだと胸を張って言えるような熱いものを込めたい。人の本質は?努力の価値は?自分の好きなところは?誰もが当然に応えを抱えて生きていない。そのことに少し安堵しながら、薬を飲んで眠るのだ。今夜は月の夢を見る。