Right to Light

陽ととなり

As you walk on by

いよいよ逃げ場は無いんだなと思った。何をして自分が元気になるのか、択が無くなった。身体を動かしても、外に出かけても、消費するだけの体力と気力と財布の中身、残るものにそれだけの価値を見い出せずに、人と会ってわははと話している一方で、早く家に帰って腹に包丁でもあててみるか、などと考えている。自己肯定感が終わっている。幸せになれる未来はもとより、ゼロの現状に、マイナスの自分に、このまま生きる先に、その価値を見つけられない。とにかく疲れた。今まで楽しんでいたこともそうではなくなった。どうせ残るものがないからと、虚無を前提に考えるから行動すら起こせない。このまま私は誰にもなれず誰にも知られず誰にも愛されず誰にも求められず誰の代わりにもなれず誰の為にもなれないのだと、仄かなはっきりとした死をいつも頭の片隅に置いている。元気だし働けるし眠れるけど心は虚ろだ。それは、やっとの思いで紡いだ言葉が実を結ばなかったからかもしれないし、大切な人の感情を少し疑ってしまったからかもしれないし、はじめて行った美容院でひたすらにマウントを取られたからかもしれないし、作った料理がことごとく美味しくなかったからかもしれなくて、原因なんてなんでもよくて、とにかく正当化される理由が欲しくて仕方ないみたいだ。

 

きっかけはそういう生活の一端かもしれないが、私を殺す根っこにあるものは、今まで積み重なってきた感傷だろうという確信がある。私はかつて手にして今は持ち得ないものに心を預け過ぎてしまっている。だから感傷が原因で死ぬ。今のバランスを崩して落ちる。死ぬのなら生まれた街の広い運河に飛び込みたい。特に思い出がある訳ではないけれど、かつての私が大切にしたいと思った場所なので。暗く静かな河面を眺めたい。食欲がないからあまりにも何も食べていなさ過ぎたのでマックを大量に食べたら気分が悪い。元気じゃない。幸せじゃない。夜が怖い。涙は出るけどそれも何も結ばない。決別にも覚悟にも復讐にもならない。こんなに腹を立てているのに声が出ない。外に出れなくなってしまった。