Right to Light

陽ととなり

無血の腕傷

暑い。暑過ぎ。今年の梅雨は意識の外で過ぎ去って、サマーシーズン到来‼︎と言わんばかりのこの暑さ、バグか?そしてどこに行っても人、人、人。世の中の不景気や少子化なんて冗談なのではと思ってしまう程で、暑さと人酔いに頭が痛くなる。家にとじこもるばかりも心が腐る気がして頂けず、もう今の自分に居場所はないのではないかととめどなく得意の負の意識にまたイラつく。いつからだ、夏がこんなにも憂鬱で、背中に滴る汗の様に苛立ちを覚え、空虚な心に影と苛立ちを落とすようになったのは。

 

最近何をしても満ち足りることがない。暫時的に満足することはあっても、何をしてもそれが終われば残るのは虚無だけ。目的があったから行動したはずなのに、終わってみると何がしたかったのかまるで覚えていない。今の自分では手に入らないものが多過ぎる。夢も未来も展望も、とてもじゃないが考えることなんて出来ない。友情も恋も愛も、どれも自分には相応しくないと思ってしまう。決してそんなことはないのに。そう人は言ってくれるのに。自分でもわかっている。辛さは永遠じゃない。その言葉に縋る一方で、部屋に一人、社会に一人放り出された瞬間に、心に落ちる影にみるみる思考を染められてしまう。頭が痛くなる。自分は何の為に生きているのかわからなくなる。何を目指して生きればいいのかわからなくなる。心に宿す自信はすっかり塵となり荒ぶ風にその痕跡すら攫われて、取り戻す術も知らず、生半可なプライドに脚を捕まれ我武者羅を叫ぶ程愚直にもなれず、ただ日々と年齢を浪費しているのが今の僕だ。一夜で満足する程子供でない癖に、その夜を引き伸ばす度胸もない。敬愛していた我が博愛の精神は、嫉妬と羨望が混じって濁った赤褐色の愛憎になって、誰を認めることも許すことも出来なくなってしまった。潔癖の気も出ているようで、世界を目に映すことも億劫で忌避すら覚える。行く末は絶縁に孤独、ループは途切れず、その先でもこうして言葉を継ぐのだろう。それは嫌だから繋がりを紡ごうとしても、自ら隔てた壁に阻まれ心は満たされず、登るもその不器用さに自ら壁に廻らした有刺鉄線を血で染める。実に大層で下らないリストカットだ。この文章も、残せば暗く苦しいものになるとわかっているのに、せずにはいられない。

 

一度目の前に開かれた道はその夏に灯りが潰えて、足元も覚束無い暗く重い道になった。導はない。夢もない。ないものばかりが思いついて自分にあるものに目をやる余裕がない。それはきっと誇り高く光っているはずなのに、無くしたものが余りにも大きくてその眩しさすら今は気付けないのだ。今年の夏も今までと同じで傷が増えるだろう。自分はここに生きているんだと思う為に、こうして腕を切る。