Right to Light

陽ととなり

心が弱ったら電話して

目覚めの悪い朝だった。最近夢をよく見る。他人の夢の話なんて10000%面白くはないし、自分の夢だって大概は起きて顔を洗う頃には忘れているのだけど、今はする。先日は歯がごっそり抜ける夢を見た。“抜ける”と言うよりは粉になって散り散りになったり、抜けた歯がくるみ大の大きさだったり、抜けた側からギシギシと生えてまた抜けていったり、バリエーション豊かに目覚めが悪い夢だった。夢占いどうのを信じるつもりはないけれど、調べてみると大きな心配事だの人生の転機だの並べてあって、どうとでも当てはまりそうなそれこそ豊富なバリエーション。この心理って何て呼ぶんだっけと考えている内に夢のことなんて忘れてしまって、結局深層心理に抱えるものなんて自覚出来ないものね、なんて話のネタにすらなりゃしない。

 

ただ今朝は、格別に心を抉る夢だった。そこには私と、友達と呼ぶのはおこがましい程に私とは色々な意味でかけ離れた旧友がいて、2人して車の中で泣いていた。彼女は私の今に至るまでの経緯と姿勢、態度、考え方を叱責し、酷く泣いた。「どうして頼ってくれないの」と震えて泣いた。私も私で情緒がぶっ壊れていて、痙攣のように首を動かして涙を流した。自分でもわかる、現実で強いストレスがあった時になる発作めいた動きだった。“頼りたくない訳ではない”と彼女に言葉を返そうとしても、何故か口には出なかった。喉を塞ぐものがなんなのか自分でもわからず、かといって別の言葉を探すことも出来ず、ただただそこにいるだけ。夢の私は、紛れもない現実の私だった。彼女はまた言葉を口にして、それは私がかつてずっと待ち望んでいた言葉で、でも今では決して耳にしたくない言葉で、私はそれに「そんなはずないだろ」と、首を震わせ言い返したところで目が覚めた。最悪の目覚め。日曜なのに。

 

夢占いなんてするつもりはない。でも、自分が何を望んでいるのかはわかる気がした。きっと、自分ではない誰かに、出来るならかつての私と付き合ってくれていた人に、今を非難して欲しいんだと思う。自分ではもううんざりする程したし(それにまだ終わっていないし)、かといって現実の第3者じゃ腫れ物か当たり障りのない予防線を貼られるし、真っ当に、愛まではいかない、友情の下に、強く叱責して欲しいんだと思う。そうしてかつての私を見る眼で今を断じてくれたなら、きっと、また1歩心が紐解ける。気がする。それとも、こんな役回りを他人に求めることが間違っているだろうか。

 

『心が弱ったら電話して』と歌っていたのは誰だっただろうか。人に頼る術を知らない私に電話などしようがないけれど、それでも、平たく潰れた想いを言葉に出来る夜が偶にはあってもいいじゃないかと思う。酒を飲み寝落ちするように、私は今日も夢を見る。